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「ペイン・アンド・グローリー」ネタバレ感想
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アルモドバル監督の自伝的作品。

映画監督の体も心もボロボロで痛みで悩まされている現在と、そこに到るまでの過去を織り交ぜて行くのですが、解りにくい処は特に無く、部分的にぐっと胸に来るシーンがありました。4つ★

サルバドール少年の幼い頃のエピソードが数回に分けて入っています。
最初はママ(ペネロペ)が洗濯をしているシーン、次にお引越しして洞窟の家に住む様になり、学校に通い出してからの生活。
学校の生徒みんなが歌が下手な中、彼だけが上手だったり、本を読むのが好きで賢く、文字が書けない若い塗装業の青年に文字を教えてあげたりと、抜きんでて優秀な監督の幼少時代。
ただ、家が貧乏で進学するとなると、奨学金をもらって進める神学校しか選択肢がなかったようで、神父になりたくない少年と母とで言い争いになります。 

その後は描かれませんが、結局神学校に進み卒業証書をもらった後、村を一人で出て行きマドリッドで暮らし、映画の世界に行き成功したのでしょう。 
でも父亡き後、1人になった母と同居しなかった事や、ゲイだったことなどで、母にとっては望んでいた様な息子ではなかった様です。

老年になった母との最期の会話のシーンの中で、母が息子に同居を拒まれ捨てられた様な気持ちでいた事に対して、息子が「マドリッドに母を連れて来て同居しても、仕事が忙しく、留守がちな家に母一人しておくのはいたたまれなかったから・・・」と言います。
そして母の最期の願い、故郷に連れて行く、という約束を守れなかった(翌日母は病院で亡くなった、しかもICUで一人きりで)というのが、今も彼の心の傷になっているのでした。

ある日、一枚の絵が画廊にあるのに遭遇します。なんとそれは、少年だった頃、文字や数学を教えていた塗装工の兄ちゃんが描いた絵だったのです。そう、その兄さんが裸で水浴びしているのを目撃したのが彼の「初めての欲望」だったのでした。サルバ少年はその日、突然高熱を出し、倒れて寝込んでしまったのでした。
その絵の裏には、文字が書けるようになった青年が彼へのお礼をつづった手紙が書かれていました。絵は自宅に送られて来たのですが、母が寄宿舎に行っていた息子に何も告げず、渡さないまま(母のカンでわざと?)、周り回って、バルセロナの市に出て、画廊に辿り着いたのかな・・・。

★以下ネタバレ★
この出来事で、創作意欲が湧き、やる気を出したサルバドール。意志のある表情になり脚本「初めての欲望」を書き始めています。
その後、手術を受け、喉も背中も改善したようで(良かったね!!)
 ラストは、とある駅の待合室で夜を明かすママとサルバが寝ているシーン。
画面が引いて行き、カット!の声。このシーンは、「初めての欲望」という題された作品の撮影シーンの一コマだったのでした。
意気揚々と撮影しているサルバ監督が! めでたし、めでたし。
最初のプールの中に座るシーンは、もしかしたら時系列で言う最初じゃなくて、手術後やる気になった時なのかな。目つきもやる気に満ちていた気がしたし
以上

印象に残ったシーン
昔の彼氏が、彼の脚本の劇を見て涙し、何十年ぶりかに電話で連絡してきて、彼の自宅で久しぶりに再会するシーン
昔の彼氏さんがイケオジです。彼はサルバドールと別れた後1年は両親の元にいたものの、翌年84年にはブエノスアイレスに引っ越していたのでした。そして女性と結婚し2人の美しい息子(両方イケメン!!)をもうけ、自分のレストランを持って幸せに暮らしていたのでした。なお、長男はもしかしたらゲイなのかもしれないです(励ます意味でも3年男性と暮らしていたことを教えたと言っていたので) その妻と別れ、また別の女性とこれから新たな生活をするようです。
でも、男性と交際したのは、サルバドールが最後だったそうです。

最後に抱擁、キスを交わすのですが、一線を越えないまま、笑顔で別れる。泣けますー。
この一件以来、彼は痛みから手を出して常習的に使う様になっていたコカインを止め、まっとうに病院へ行き治療に挑もうと決意するのでした。

お部屋のPOPなインテリアとか、赤とかの鮮やかな色使いとかも健在で目に楽しかったです。
バンデラスが監督になりきって演じていました。

ペイン・アンド・グローリー (2020/スペイン)
Dolor Y Gloria
Pain and Glory
監督 脚本 ペドロ・アルモドバル
出演 アントニオ・バンデラス / アシエル・エチェアンディア / レオナルド・スバラグリア / ノラ・ナバス / フリエタ・セラーノ / ペネロペ・クルス

内容・あらすじ 映画監督サルバドールは、全身の痛みと、亡くなった母(フリエタ・セラーノ)への罪悪感で今は引退同然の状態だった。ある日、彼の過去の作品が再上映されることになり、喧嘩別れした主演男優アルベルト(アシエル・エチェアンディア) のもとを32年ぶりに訪ねるのだが・・。バンデラスがカンヌ映画祭 主演男優賞受賞。

地図で、監督の故郷と、引っ越しした洞窟の場所を見ました。
シウダー・レアル県カルサーダ・デ・カラトラーバ ⇒ パテルナ(バレンシアの近く)
こんな田舎からスペインを代表する監督さんになったのね・・・。
【2021/02/20 14:22】  コメント(4) | トラックバック(0) | スペイン映画
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コメント

最初はこんなトムハンクスみたいなおじさんはアントニオバンデラスではないはずだという違和感で見たんですけど、バンデラスでした。ポロシャツ着て声が小さいけどやっぱりバンデラスでした。
何だろう、いくつかこの監督の映画を追ってきたんだけど、年を取ってからの映画の方が「・・・何ですと???」という困惑が薄れてきつつあるという彼のフィルモグラフィが面白いです。
洞窟のお家は本当に謎で、雨が降ったら一体・・・。本当はガラスが天井窓? にあったのかな?
牧場主  【 編集】  URL |   2021/12/06 10:26   |  TOP ▲ |


牧場主さん、こんにちは!
コメントありがとうございます!
この映画について、誰かと感想お話するのって、今日が初めてだったんだなあ、嬉しいです♪

そうそう、最初は小さくしぼんじゃってる様なオジサマがバンデラスだとは思えなくてビックリしたわー。
役作りよね。

確かに最近は馴染みやすいストーリーが多くなってる気がする。
私はそっちの方が初期の頃のより楽しく見れるみたい。
この前、u-nextに入っていた時、初期の映画幾つか見たのだけれど、いまいちハマれないのとか、あまり楽しく見れなかったのとかがあったから・・・。

洞窟のお家ねー。雨が滅多に降らないから、あれで良しなのかも。

latifa  【 編集】  URL |   2021/12/06 14:34   |  TOP ▲ |


こんばんは。
コメント&TBありがとう。

latifaさんの感想がとても丁寧で、読みながらまたいろいろ思い出しましたよ。
元カレさん、いい感じだったよね。再会のシーンにじ~んときたわ。寄りを戻さずに別れたところも好き。

ラストシーンで映画の撮影っていうところが分かるのも良かったよね。
また再び、映画に向かいあい、生きる力が湧いてきた姿にホッとしました。
痛みを抱えて辛いシーンが多かったけれど、そこまで暗さを感じなかったのは、色使いのせいかな?あと回想シーンも良かったから。
  【 編集】  URL |   2022/05/18 20:51   |  TOP ▲ |


瞳さん、こちらにもコメントTBありがとう!

ほんとだ。私にしては珍しく長文で感想書いてる (もう忘れてた!)
面白かったからなのねー。(これも忘れかけてる! 怖)
でも、読み返すと記憶が蘇って来た。
やっぱり、この映画好きだったんだなあ。

確かに!
色使いがカラフルで、特に赤い色などの効果で、内容は暗いのに暗さを感じなかったね。
そうかー監督の持ってるものを映画で使ったりしてるのかー。
latifa  【 編集】  URL |   2022/05/19 10:52   |  TOP ▲ |


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