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「顔のないヒトラーたち」「ハンナ・アーレント」感想
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戦後の実話ベースの、ナチス関連作品2つ。両方とも面白かったです。
「顔のないヒトラー」
この映画で驚いたのは、戦後10数年経った1958年頃は、ドイツの若者は、アウシュビッツ収容所の事など、殆ど知らない状態だったということでした。
今はドイツ国民はもちろんのこと、世界中の人が知っている、アウシュビッツですが、この時代のドイツではもう過ぎた事として、あまり誰も語りたがらなかったせいか、若い人達は知らずにいたなんて・・・。

また、ナチスSSだった人が教職者になっていたり、それを訴えても、結局なあなあにされてしまうという状態・・・。

とはいえ、かつてヒドイ事をした人間が、現在は人の良いパン屋さんをやっていたり、ナチ時代の残酷な行動が想像できないような、気のいいやつだったり・・・。

ナチスの時代、ヒトラーだけが悪かったのではなく、多くのドイツ国民も同調していた。
主人公の母が曰く、みんなナチスの党員に入っていた、それが普通だったのよ、と。
そして、恐ろしいことに尊敬していた主人公の父親までもが、そうだったことが解る。

主人公の検事さんが、誰が見てもカッコイイと思えるような、モデルばりの美男子さんで、その彼女になる女優さんも綺麗な人で、目にも楽しかったです。

それにしても、この裁判がきっかけになって、初めてアウシュビッツの事、ナチスのやった事や、一部の党員の責任追及などが行われたんですね。もし、主人公が、あの時動かなかったら、収容所での事はあまり表に出ないままだったかもしれないなんて・・・。

私は、ドイツは偉いなぁー自国でやった事に対して、とても反省しているし、賠償や責任も負い、いつまでも忘れない様にしている様だと思っていましたが、実は違ったんですねえ・・・。

顔のないヒトラー(2014年/ドイツ) 原題Im Labyrinth des Schweigens
監督ジュリオ・リッチャレッリ (なんとイタリア人らしい)
キャスト アレクサンダー・フェーリング フリーデリーケ・ベヒト アンドレ・ジマンスキー ゲルト・フォス

・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハンナ・アーレント
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ヘビースモーカーぶりが印象的なハンナは、収容所にも入っていた過去を持つユダヤ人。
現在は大学で教師をしながら、物書きとして人気もあり、優しい夫と安定した暮らしをしています。

そんなある日、イスラエルのモサドに捕えられたアイヒマンの裁判を見学することになります。
彼女は冷静な目でしっかり見学し、彼女なりの意見を公開しましたが、アイヒマンが平凡な人物であると言った事について、世間で問題になってしまいます。このことについては「悪の凡庸さ」と表現され、最後の方で、ハンナの公開講座の主張で詳しく論じられますが、彼女の言った事は凄くまっとうな事なのですが・・・。
そして、もうひとつ、ユダヤ人の中にナチスに協力したひとが少なからず(かなりの数が)いた、ということも明かしたのです。
結果、酷いバッシングにあってしまいます。

私も、ナチスに協力したユダヤ人指導者が、被害を増大させた、って事に驚きました。
協力しないと、その人が殺されてしまう恐れがあって、やむを得なく手伝うしかなかった人が大多数だと思いますが・・・。
でも、ネットでちょっと調べてみたらば、当時のユダヤ人のシオニストの一部の人達にとっては、ナチスが取った行動が、好都合で、アイヒマンがおよばれされていた・・・ということも書かれていて、びっくり・・・。

思考しないで行動する事、って危険なんですね・・・。
その場の空気や、みんながこうだから・・・という風に、流されて行動しがちですが、国家が戦争や危険な方に進んで行く時や、イジメ問題なども、そういう事が大きくかかわってる気がします。そういう私自身も、政治の事とか、あんまり興味が無いので、無思考だったりして・・・イカンな・・・。
ちゃんと物事を考えて、自分なりの意見や判断を持つってことが、それらを防ぐ事にもなりますね。

でも、少数派であろう意見を言うということって、バッシングに遭うことや、様々なリスクがあるから、凄く覚悟が要ることですよね。実際、彼女も多くの友人を失ったり、仕事にも大きな影響が出て来たり、大変だったと思います。
それでも堂々と勇気を持っての行動、立派でした。 

ハンナ・アーレント (2012年/ ドイツ・ルクセンブルク・フランス)
監督 マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演  バルバラ・スコバ(ハンナアーレント)
アクセル・ミルベルク(ハインリヒ・ブリュッヒャー)
ジャネット・マクティア(メアリー・マッカーシー)
【2016/05/13 19:42】  コメント(4) | トラックバック(0) | ドイツ・デンマーク
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コメント

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  【 編集】   |   2016/05/14 09:28   |  TOP ▲ |


カギコメントさん、こんにちは!

ドイツを見本に・・は、多くの日本人も思っているんじゃないかな。
私もそう思っていますが、本家本元のドイツも、最初から立派な反省具合だったわけじゃなくて、色々あっての今の姿なんだなあーと、この2作を見て思った次第です。

確かに、こういう映画こそ、子供たちに見てもらいたいし、学校で見せるのも良いと思うなあ。
あと、薬物で人生台無しになっちゃう系映画も、ぜひ学校で見せるべき!

>大きな国という単位でも、個人という単位でも、保身という自分かわいさの前では、どうにもならない弱さを抱えているのだな、ということです。
> そういう中で、何が正しいのかを見定める眼差しを、いつでも持つことが出来るっていうのは、難しいですね~。

うん、うん。その通りですね・・・。
保身。
最初レジスタンスだったり、腐ったこの国を変えてやる!という意気込みを持った一青年が、その後、がんばって体制を崩壊させ、数年して今度は自分が国のトップになった時、昔の彼はいずこに?ってくらい、今度は保身ばかりの政治家になってしまう・・・っていうの、よくありますよね。
悲しいもんです・・・。
latifa  【 編集】  URL |   2016/05/15 13:38   |  TOP ▲ |


latifaさーんボナセーラ~

ほほう。ナチスもの立て続けに見られたんですね!私も何故かナチスものは観てしまう傾向がありますが顔のないヒトラーたちは観ようと思ったら終わってまして…
戦後70年の影響か昨年といいナチス関連の映画が沢山上映されてますよね


アウシュビッツねー
もうね、実際に行ったからその場の空気、匂い、雰囲気は今でも脳裏に焼き付いてますよ。ほら沖縄のひめゆりの搭に行ったら涙が自然に流れてきて泣いてしまったって話を聞くでしょう?まさにあんな感じ。
日本人のツアーではヘビーだから行かない人達も多々いるそうですが、せっかくポーランドに来ているならヘビーなのは重々承知のうえ負の歴史を知るべきだと思っちゃうなー
で、映画のお話(笑)
アンナハーレントは観に行きました!
うんうん。アンナさんの冷静かつ客観的な思考正しいと思うのよ。
確かにアイヒマンのした事は正当化されることはないと思うけど当時のナチスという組織=ヒトラーに反旗をひるがえす事なんて出来ないと思うの。
ナチス=会社に置き換えても、アイヒマン個人が悪いというよりナチスの組織が悪かったんだよね…
でも冷静になれば頭ではわかっていても…身内がナチスに殺された人達は…わかっていても許せないよね。
ましてやアンナさん、同じユダヤ人なのにあんたナチスの見方かい?裏切りもの!ってなってしまいますよね。
アンナさんは感情を抜きとして冷静に事実を見極めようとしたんだよねー
私達は、日本人だからドイツと同盟国だったせいもあり、アウシュビッツで日本人が処刑されたこともないし、ナチスの怖さを経験したわけではないけれど… 
戦争は二度とおこさないでほしいと思うよね。
でもアメリカ大統領選、もしトランプが大統領になったら…怖いものがある(笑)


レナ  【 編集】  URL |   2016/05/15 19:08   |  TOP ▲ |


レナさーん、こんにちは!
ヒトラーものって、コンスタントに作られるよね(^^ゞ 
で、結構面白い作品も多いから、また見ちゃう。
今年も、面白そうなのが、公開されそうだわー。

顔のないヒトラーは、お家で見ても楽しめる系映画だったから、今度時間があるときにレンタルで。
主役のお兄さんがカッコイイ人だったー。
割と、こういう映画って、地味な人が多いから、こんなモデルばりの人が主役なのって、珍しい気がしたよ。

アウシュビッツ、レナさん行った事あるんだよね。
いつも思うんだけど、レナさんは偉いなー。
ベトナムとかでも、沖縄でも、ちゃんとそういう場所に行かれてるもの。

アウシュビッツは、テレビや写真で知っていても、自分がそこに立った時に感じるものは、全然違うだろうね。
鳥肌たちまくりな気がする・・・。
それに、割と最近なんだものね。まだ100年未満に起きた事だもの。
前に、レナさんが、イギリスの処刑が行われた場所とかに行ったお話を聞いたけれど、今は観光地になってるものの、昔は残酷なシーンがあった場所って、やっぱり何かが染みついてる気がするよね。

アンナハーレントは劇場鑑賞だったのねー、さすがー!見てるねー。

> ナチス=会社に置き換えても、アイヒマン個人が悪いというよりナチスの組織が悪かったんだよね…
おおー、解りやすいね、その表現!
特に会社に忠実な人が多い日本では、このたとえ、ぴったりくるね。

> アンナさんは感情を抜きとして冷静に事実を見極めようとしたんだよねー
なかなか、出来ることじゃないし、すごいわ・・・。
でも、調べてみたら彼女って、凄く敬虔なユダヤ教信者ってわけでは無かったみたいね。
何事も、あまりにガッチガチになるより、頭を少し軟らかくして、色々な意見、異論反論とかも聞ける人間が多かったら、戦争とか衝突も少しは減ってくれそうだけどな。

言い忘れたから、追加。
トランプ氏って、とんでもない人だよね? でも驚くのは、そんな人を支持する人が沢山いるという事実だよー。
latifa  【 編集】  URL |   2016/05/18 15:03   |  TOP ▲ |


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