「長江哀歌」(エレジー)感想と、登場する場所の地図
2006年ベネチア国際映画祭でグランプリを獲得した作品。3つ★半。
私は待ち人来たらず(←ちょっと違うが)みたいのとか、ダムで沈み行く町、みたいなのが、ぐっと来る性分なのと、中国の雄大な川下りの風景が舞台と、この映画に惹かれる要素が最初からありました。
私は1991年に中国の桂林に、川下りをしに行ったことがあるほど、あの手の風景には、めっぽう弱いんです。
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舞台は、中国内陸部、長江中流域の重慶の東に位置する県、奉節。世界最大となる予定の三峡ダムの建設中で、沈みゆく部分の古い建物を壊す!という作業中。そこに、山西省からある男、そしてある女がやって来る。
 ⇒中国地図こちら 赤い●が重慶、その北側の赤い横線が、山西省です。かなり遠い!

ダム建設の為に、立ち退きを余儀なくされる人がいる一方で、人を追い出し、町を取り壊す工事に従事している人達。中国の社会が大きく変貌していく中、一部分だけが急激な近代化を遂げてはいるものの・・とか、格差社会の一端なども、上手い具合に表現していました。コンピューターゲームをする中国伝統芸能の服をまとった人達、貧しそうな労働者と携帯電話、古くて汚くてボロボロの家と、大理石で出来てるみたいな立派なビルのクロークとトイレ、汗まみれの上半身裸の安い日給で働く男達と、電話の一声で橋をライトアップさせる成功者・・。

この景勝地の最後の姿、水没によって大きく変わらざろう得なかった人々などを、フィルムに留めたというのが、この映画を作る大きな意味があったと私は思います。(後世に残りますもんね)何10年後かには、かつてダムの下に町があったということさえ忘れ去られてしまう日が来るかもしれなくて・・・。

映画は、「烟(タバコ)」「酒」「茶」「糖(アメ)」というタイトルで分けられていました。監督のインタビューを読んだところ、「どれも中国の日常生活に溶け込んでいるものです。それと同時に、かつては国が支給するもので個人では買えない貴重ものでした。」と書かれていてビックリ・・・。

★ネタバレです 文字反転してください★
UFOが飛ぶ、ビルがロケットのように打ち上げられる、綱渡り等のシーンは、遊び心みたいのを感じて、私は嫌いではなかったです。特にラストの綱渡りのシーンは、あの人が歩いてる部分が、ダム完成後は、地上?水面?になるのかなあ・・・って感じがして(私が勝手にそう思っただけだけど)良かったな。
チョウ・ヨンファ好きの青年が死んじゃうなんて・・・。彼が偽札で煙草に火をつけるシーンは笑いました。
タオ姉さん、あんな冴えない旦那、こっちから捨てちゃえ!彼女の「好きな男がいる」は嘘ですよね・・・?メソメソせず、彼女から離婚を申し出て、カッコ良かったぞ!君なら、もっと素敵な男が見つかるはず。
以上

長江の、もやがかかった風景、廃墟な町の風景が、何とも言えず悲しいような・・幻想的な映像でした。川を流れる時にかかっていた音楽もとても良かった。「ラマン」のメコンを行く船のシーンでかかる曲に似ていた。

原題 三峽好人/STILL LIFE  2006年映画
監督 ジャ・ジャンクー
出演 チャオ・タオ 、ハン・サンミン 、ワン・ホンウェイ 、リー・チュウビン 、マー・リーチェン 、チョウ・リン

(内容・あらすじ)
サンミンは、昔3000元で妻を買い、彼女との間に娘を一人もうけたが、16年前、妻と娘が家出、今更ではあるが彼女らを捜しに山西省から長江流域の都市、奉節にやって来る。昔の住所を頼りに訪ねたものの、そこはすでにダムのため水の底に沈んでいた。役所に問い合わせてもらちがあかず、結局、彼は安宿に腰を落ち着けて2人の行方を捜すことにする。

ここのところ、中国関連で良い話題を聞かないし、嫌悪感を増す様なマスコミの取り上げ方など・・、ついつい中国・中国映画が好きだった私も、少なからず影響を受けてしまっているのはいなめないけれど、でも、嫌いにならない様に、なんとか踏みとどまりたいと葛藤中。

以前書いていた記事⇒ジャ・ジャンクー「三峡好人」と「世界」 中国地図

急激に都市化し変わりゆく重慶を描いた映画といえば、「ションヤンの酒家」や、「たまゆらの女」が、ありました。
そして、ダムで沈んでしまう街という部分は、「小さな中国のお針子」にもありましたね・・。
【2007/08/31 10:45】  コメント(10) | トラックバック(15) | 中国・台湾映画
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コメント

latifa さん、こんにちは。
映画に出てくる川って好きなのですが、セーヌ川なんかとはまるで違う大自然の美しさの長江でした。美しくもの悲しい。
私は中華圏にはどこにも行ったことがなくて、最後に訪れる国かなぁなんて思ったりしていたんですが、こうしている間にどんどん近代化していってしまうのかと思うと寂しいです。胡同もなくなっていき。
山西省と奉節の位置を確認したかったので、こちらの地図は見やすくて役立ちました。遠いですよねー。
かえる  【 編集】  URL |   2007/09/02 13:45   |  TOP ▲ |


かえるさん、こんにちは!
セーヌ川(笑)とは全然違ってましたね(^-^ )
私も「川」出て来る映画好きです☆

胡同といえば、フートンのひまわり、まだ見ていないんですよ・・・。
きっと、かえるさんなら、ご覧になられていらっしゃる様な^^。

昔ながらの中国の風景ってステキだったので、どんどん近代ビルディング化していくのは残念な気持ちもありますね・・。建物以外の面でも、オリンピックが近いこともあって、痰飛ばし禁止とか、順番待ち厳守とか、そういうのが定着してくれるのは嬉しい気がします(^c^*)

私も中国は、香港、桂林、広州しか行ったことがないんです。もっと色々行ってみたかったんですが・・。今も昔も、一番行きたいのはウイグル自治区(カシュガル、シルクロード関係)とかチベットとかです。
latifa  【 編集】  URL |   2007/09/03 09:32   |  TOP ▲ |


こんばんわ。
中国関連のニュースで敬遠していたわけではないけれど、ここしばらくご無沙汰だった中国映画の鑑賞となりました。ちょっと眠気を誘われてしまうところもありましたが、静かな情景が味わい深い作品だったと思います。
本作よりはドラマ色が強いものの、昨年の夏に見た『胡同のひまわり』は良かったですよ。ぜひlatifaさんの感想も聞いてみたいです。
そうそう、先日TVで『小さな中国のお針子』が放映されていたのをDVDにとってあるのです(こちらもダムが題材になっているのですね)。なかなか見る時間ができないのが困ったところですが、また鑑賞したら記事を書こうと思います。また11月には大阪で「中国映画の全貌」なる上映企画があるので(昨年は『世界』を見ました)こちらも足を運んでみたいところ。
狗山椀太郎  【 編集】  URL |   2007/11/01 22:28   |  TOP ▲ |


椀太郎さん、こんにちは!
そうかぁ~2回は、やっぱり2回分の代金をお支払いになったのですね~。
でも、普段から椀太郎さんって、たまに、2回劇場に足を運んだり、2回見たり・・ってことされていらっしゃいますよね。ほんとに映画がお好きなんだなぁ~って感じてます☆

胡同のひまわり
見たいリスト(一応そういうのが頭の中にある)に入っているんですよ~。レンタルも秋頃だったかな?開始になったし是非に、と思ってる処です。
お針子、感想楽しみですー。見終わった後、あれはどうなのかな?みたいな話をしたくなっちゃう映画かも・・。

そういえば、サイボーグ・・もご覧になられていらっしゃいますよね♪
私は、まだ未見なので、見たら、記事拝見させて頂こうと楽しみにしています^^
latifa  【 編集】  URL |   2007/11/03 09:00   |  TOP ▲ |


こんばんは♪
「世界」の方がストーリー的にはおもしろかったんですが(ラストは切なかったけど)、この映画は長江の魅力が圧倒的だったことと、消えゆく物を惜しむ気持ちや寂しさ切なさが漂っていました。
一方、どんな状況にあっても逞しく生きる人間の姿も印象に残ってます。

旅行好きのlatifaさんは桂林の川下りも経験済みなのね~☆
川の水はこの映画のように濁ってましたか?

「小さい中国のお針子」は好きな作品です。あの女の子が狭い村から夢を持って飛び立っていくのがなんとも良かった。
あの青年二人は下放によってあの村に来たのでしたよね?
文化大革命というのも好きなキーワードです(笑)
ミチ  【 編集】  URL |   2007/11/30 22:32   |  TOP ▲ |


私は、世界よりも、こちらの方が若干★が高かったかな~^^
ミチさんは両方とも劇場鑑賞だし、私は両方ともお家鑑賞なので、見た印象ってきっと違いますよね♪。
私はあのタオ姐さん(タオって、世界の時の名前でしたっけね?その印象が強くて、私の中では、あの女優さんは、未だにタオ姐さんです。)が、ちゃ~んと中年女性を演じていて、世界ではまだ若い女性の役だったけれど、女優さんだなあーと思いました。

ところで、桂林の水。結構濁っていた様な・・・もう16年も前なので、結構忘れちゃってます(^^;) 川の水より、回りの風景ばっかり見ちゃってました。

>小さい中国のお針子
私は、フランス人や西洋の人が撮った・作った中国映画・アジア映画とか、そういうのが結構好きなんです。
ヨーロッパ人のアジアン趣味って感じで、泥臭さとかは消えちゃったりするものの・・・。

>文化大革命
中国映画には欠かせない?大事件ですよね。凄い昔って訳じゃないんですよね・・。
latifa  【 編集】  URL |   2007/12/01 17:53   |  TOP ▲ |


latifaさま、こんにちは。
一般受けはしない映画だなと思ったものの、2回観てしまいました。味わいのある映画ですね。
この監督の映画を初めて観たのですが、とっても若い監督さんなんですね。
中国って、本当に急激に変化しているんだな~、と思いました。
latifaさまは桂林にも行かれてるんですね。私は香港しか行ったことがないんですよ、しかも返還前。
『~お針子』を少し前に観たので思い出してしまいましたが、あの辺りやこの映画の舞台も、地震の影響はあったのでしょうか。
オリンピックもあるし、中国って今が正念場って感じがします。
ではでは、また来ますね!
真紅  【 編集】  URL |   2008/06/17 09:32   |  TOP ▲ |


真紅さま、こんばんは!
2回ご覧になったのですね?
この監督さんの他の作品では、「世界」とかが、割と見られている様な気がします。都会に出て来た田舎出身の若者の孤独感みたいのを表現するのが上手な監督さんという印象です。

いや~私が行ったのも、1991年と、もう随分昔で、返還前ですよ^^
香港+桂林+広州という組み合わせで行ったんです。
桂林では、レンタサイクルに乗った家ら夫婦が夜に迷子になったのを、日本語を少しだけ話せる高校生の男の子が親切に声をかけてくれて、助けてくれて、お礼に一緒に飲みに行って、暫し色々お喋りなどして・・という、とても良い思い出があります☆
latifa  【 編集】  URL |   2008/06/17 17:38   |  TOP ▲ |


TBありがとう。

僕も山東省から山西省には、入ったことがあります。
北部から内陸に入ったところですから、出稼ぎとしても相当、遠いですよね。
この監督は山西省の出身ですから、主人公のふたりは監督の視線も併せ持った存在なんでしょうね。
kimion20002000  【 編集】  URL |   2008/10/17 00:11   |  TOP ▲ |


kimionさん、こんにちは!
うわ~、kimionさんも、中国のあのあたりに行ったことがあるのですね~。
中国の風景とか凄くそそられます。
なんだか最近は良くないニュース(食とか・・色々)ばかりが中国関係では耳にするようになって、映画とは全然無関係ではありますが、とても残念です・・・。
latifa  【 編集】  URL |   2008/10/17 15:24   |  TOP ▲ |


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